各コンポーネントの役割・特長は、それぞれのREADMEを参照してください。開発・運用手順は、各READMEから案内しています。
| ディレクトリ | 内容 |
|---|---|
apps/android/ |
被災地の端末を想定し、投稿とリレー、サーバーとの送受信ができるAndroidアプリ |
apps/esp32/ |
M5Stack Basicで動く、リレーとサーバーとの送受信ができる中継ノード |
apps/web/ |
AppViewから投稿を取得して表示するWebクライアント |
pds/ |
Nostrリレー兼PDS。投稿を収集、蓄積する |
appview/happyview/ |
投稿を索引化するAppView(HappyView)のコンテナー・NixOS設定 |
appview/bsaf/ |
既存のBSAF投稿をAppView(HappyView)へ収集する機能 |
lexicons/ |
投稿レコードやフィード取得APIのLexicon定義 |
protocol/ |
基本プロトコル・拡張・配送などの仕様文書 |
third_party/ |
Androidアプリで使う外部ライブラリの固定スナップショット |
被災地からの投稿を閲覧できるWeb Client: https://mosimo.oriom.dev
以下は内部的に使っているサーバー
- AT Protocol PDS 兼 nostr Relay: https://pds.oriom.dev
- AT Protocol AppView: https://appview.oriom.dev
災害によって通信設備が被害を受けると、普段利用しているインターネット経由の連絡や情報共有が難しくなります。Bluetoothなどを使って端末同士で通信する技術は既にありますが、専用アプリを事前にインストールしていなければ利用できないという課題があります。
そこで私たちは、普段使っているアプリに災害時の通信機能を組み込み、日常の利用がそのまま「もしも」の備えになる仕組みを考えました。
Mosimo Protocolは、「いつものアプリが、もしもの通信網になる。」をコンセプトにした、アプリに組み込める共通の通信プロトコルです。
インターネットに接続できない状況でも、BluetoothやWi-Fiで近くの端末と情報を交換し、端末から端末へ情報を中継します。同じプロトコルに対応した異なるアプリ同士でも情報を受け渡せるため、普段使っているアプリを通じて通信網に参加できます。
さらに、インターネットに接続できる端末を通じて情報をオンラインに届け、離れた場所にいる人もクライアントで閲覧できるようにします。
Important
インターネットがなくても、BluetoothやWi-Fiで端末同士が情報を受け渡し、人の移動とともに運びます。
大きな災害が発生した場合、通信インフラが破壊され、スマートフォン同士の通信もできなくなることが過去に何度も発生しています。発電所のトラブルでブラックアウトが置きた事例(北海道胆振東部地震)もあります。
このような状況下では、情報共有が最大の課題になります。能登地震の際も避難所の情報が届かず、混乱が発生しました。Mosimo Protocolは、スマートフォン同士が直接通信することで、通信圏外でも情報を受け渡すことができます。
Mosimo Protocolは、スマートフォン同士が直接通信することで、通信圏外でも情報を受け渡すことができます。これにより、災害時でも情報を共有することができ、混乱を最小限に抑えることができます。
Important
用途に合わせて拡張できる共通のプロトコルで、異なるアプリ同士が直接情報を交換できます。
メッシュネットワークで情報を共有するというこれまでも広く試みられてきましたが、どれも専用アプリが必要でした。
Mosimo Protocolは、既存のアプリに組み込むだけで、異なるアプリ同士でも情報を交換できるようになります。 プロトコルもオープンなので、誰でも自分のアプリに組み込むことができます。 細かいパーツをレゴのように組み合わせて作られているので、誰でも新しいパーツを定義して拡張することができます。
これにより過去に類を見ないユーザー密度を実現し、実用的なメッシュネットワークを構築することができます。
Important
スマートフォン同士の通信だけでなく、既存のメッシュネットワークやインターネットとも接続します。
たとえインターネットに繋がっても、サーバーがダウンしてしまえば、情報を受け取ることはできません。Mosimo Protocolは、既存のメッシュネットワークやインターネットとも接続することで、情報を受け取ることができます。
具体的には、
- At Protocolを用いて各ユーザーの投稿を整理して、複数のサーバーに分散して蓄積できる
- nostrのリレーを用いることで、蓄積サーバーが全停止しても、端末同士の情報交換を続けられる
- AT ProtocolのAppViewが情報を収集・整理することで、遅い接続でも効率的にデータを受け取れる
災害でインターネットが途絶えた際にも、近くの端末同士で情報を受け渡すことで、連絡や地域の状況共有を支えます。
この仕組みを日常的に利用されるアプリに組み込むことで、災害用の専用アプリをあらかじめ入れてもらうという導入の壁を下げます。対応するアプリが増えるほど、アプリの違いを越えて情報を中継できる端末が増え、災害時に利用できる通信経路を広げられます。
まずは、私たちが開発する東北大生向けアプリ「とんペディア」への実装から始め、日常的に使われるアプリを災害時の通信手段として活用することを目指します。
さらに、自治体のアプリなどにも導入を広げ、地域で利用されるさまざまなアプリが互いに情報を中継できる仕組みへと育てていきます。将来的には、災害時の情報共有を支える世界標準のプロトコルとなることを目指し、国や地域を越えて情報を届けられる強靭なネットワークへと広げていきます。
-
柔軟性と拡張性のあるプロトコル設計
さまざまなアプリへの組み込みや、今後の用途・通信手段の広がりを見据え、特定のアプリだけに依存しない、柔軟で拡張性のある仕様づくりに注力しました。
-
プロトコルの特徴が伝わる実装デモ
プロトコルの仕組みや特徴を実際の動作で伝えられるようなデモを作成しました。インターネットに接続していない端末間でBluetoothや同じWi-Fiネットワーク内の通信によって情報を受け渡し、オンラインの端末を通じてクライアントに表示する流れを体験できる形にしました。
技術構成: Nostr・AT Protocolによるオンライン公開・閲覧と、BPv7による圏外中継
| 技術 | Mosimoでの役割 |
|---|---|
| 投稿者の署名付きイベントを保持し、リレーを介して送受信する。 | |
| 端末署名済みリポジトリを復元・検証し、投稿の公開・索引化につなぐ。 | |
| 署名付きイベントを符号化し、圏外で保存・持ち運び・中継する。 | |
| 近くの端末や同一LAN上の端末との通信を担う。 |
投稿基盤: Nostr・AT Protocolによる送受信・公開と、PLC Directoryによる公開鍵・公開先の確認
:署名付き投稿をリレーへ送信・購読。
:端末で署名したリポジトリをPDSで復元・検証し、
com.atproto.sync/com.atproto.repoのXRPC APIとfirehoseで公開。:
did:plcの登録・解決、署名公開鍵とPDSエンドポイントの確認。
防災情報の収集: BSAF JMA BotのBluesky投稿のJetstream経由での取得
:登録済み発信元の
app.bsky.feed.postを購読し、bsaf:v1タグ付きのBSAF投稿を収集。:気象庁の地震・津波・火山関連情報をBSAF形式でBlueskyへ投稿する非公式Bot。情報取得元として利用し、Jetstream経由で投稿を収集。
:防災情報の原データ。現在はBSAF JMA Botによる投稿を通じて間接的に取得。
閲覧API: Mosimo投稿と収集済みBSAF投稿の取得
- 独自AppView API
dev.oriom.mosimo.getFeed:Webクライアント向けにタイムラインの投稿を提供。
データ形式: Nostr・atprotoとCBOR・BPv7による署名付き投稿の保持・交換
:本文・タグ・署名を保持し、atprotoレコードと端末署名済みcommitの復元情報を格納。
/
:署名付きイベントをコンパクトに符号化し、オフライン中継用のBundleとして転送。
:独自投稿レコード
dev.oriom.mosimo.postとフィードAPIを定義。/
/
/
:atprotoリポジトリの内容識別・整合性検証・同期。
(Bluesky Structured Alert Feed):防災情報などを構造化タグ付きのBluesky投稿として扱う規約。原投稿のレコード・タグ・CID・URIを保持して収集。
防災情報形式: CAP・EDXL-DE・気象庁XMLによる警報・防災情報の表現
(Common Alerting Protocol):警報の内容・対象地域・有効期間・更新取消を表すXML規格。
(Emergency Data Exchange Language Distribution Element):CAPなどの緊急情報を包み、配布先・公開条件・更新取消を表すXML規格。
:地震・津波・火山・気象などの防災情報を記述するXML形式。
ネットワーク: BLE・LANによる端末間中継と、HTTPS・WebSocketによるオンライン通信
(Bluetooth Low Energy):Android端末間、およびAndroid・ESP32間の近距離通信。
/
(
)+
:同一LAN上のAndroid端末を発見してBundleを交換。
:Bundleを保存して持ち運び、後から接触した端末へ中継。
/
:PLC・XRPC APIへのアクセス、Nostrリレー・atproto firehose・Jetstreamとの通信。
Androidアプリ: 投稿の作成・署名・暗号化保存、BLE・LAN中継、オンライン送信
、
・
:投稿・中継操作・診断画面。
:非同期処理。
(フォーク元):BPv7のエンコード・デコード。
/
:JSON・CBORの処理。
:HTTP / WebSocket通信。
:NostrのBIP-340署名とatprotoのECDSA署名。
/
:鍵・投稿・中継状態の暗号化保存。
ESP32: Android端末から受け取った投稿の検証・保存・中継と、画面表示・音声読み上げ
/
/
:ESP32向けファームウェア。
/
:M5Stackの画面・ボタン・スピーカー制御。
:BLE GATTによるAndroid端末とのBundle交換。
/
:JSON処理と中継データの永続化。
:署名検証・SHA-256ハッシュ計算。
:受信メッセージの音声読み上げ。
Nostrリレー兼PDS: Nostrで受け取った端末署名済みatprotoデータの復元・検証と、API・firehoseでの公開
/
・
:独自PDSと内蔵Nostrリレー(
pds/)。/
:Nostrイベントの署名検証とWebSocket通信。
/
:端末署名済みcommitの検証、MSTの再構築、CARの生成。
/
:DAG-CBORとCIDの処理。
(
node:sqlite)/(
pg):イベント・リポジトリ・配信履歴の保存。
AppView: HappyViewによる投稿の索引化と、Mosimo・BSAF投稿の統合フィードの提供
/
:AT ProtocolのAppViewとして投稿を索引化・配信(
appview/happyview/)。/
/
:JetstreamからBSAF投稿を収集するサイドカー(
appview/bsaf/)。/
:収集したレコードのCID整合性確認。
:HappyViewのクエリスクリプトでMosimo・BSAFの統合フィードを提供。
Webクライアント: AppViewから取得した投稿と発信者ハンドルのタイムライン表示
/
/
:タイムライン画面(
apps/web/index.html)。/
:AppViewから投稿を取得・表示し、PLC Directoryから表示用ハンドルを解決。
サーバー運用: NixOSによる構成の宣言的管理と、サービス実行・HTTPS公開
以前から個人開発していた運用基盤 podman-cluster-config を活用しています。
デバイス: Androidスマートフォン・M5Stack・VPSによる投稿作成・圏外中継・オンライン公開・閲覧のデモ
:投稿の作成・表示、BLE・LAN中継、オンライン時のNostrリレーへの送信。
:Bundleの保存・中継、画面表示、AquesTalkによる音声読み上げ。
:独自PDS・NostrリレーとHappyView(AppView)の稼働環境。投稿の受け取り・索引化・Webクライアントへの配信。
さまざまなアプリや用途に合わせて拡張できる、柔軟な共通プロトコルを設計しました。
共通の本文を土台に、位置情報や出典など、各アプリが必要とする情報を追加できる構造にしました。追加情報に未対応のアプリも、本文を読み、元の情報を壊さず中継できます。アプリごとの機能の違いや、今後の用途の広がりを受け止めながら、異なる対応アプリが同じ通信網に参加できることを重視しています。この共通の土台に、投稿者の署名を保ち、通信圏外からオンラインの情報網へつなぐ仕組みを組み合わせています。
flowchart TD
A[発信アプリ:投稿を作成・署名] -->|オンライン| N[Nostrリレー:署名付き投稿を収集]
A -->|圏外ではBLE・LAN| M[別の対応アプリ・エッジデバイス]
M -->|保存して持ち運び・次の端末へ中継| M
M --> G[オンラインにつながる端末]
G -->|元の署名を保って送信| N
N --> P[PDS:端末署名済みデータを復元・検証・公開]
P -->|atproto Relay・Jetstream経由| V[AppView:投稿を索引化]
V --> W[Webなどの閲覧クライアント]
アプリが情報を「理解すること」と「中継すること」を分け、用途の違うアプリも通信網に参加できるようにします。
あるアプリが避難所の位置情報を付けても、別のアプリがその形式を理解できるとは限りません。そこで、基本投稿には本文・作成時刻・配送期限を持たせ、位置や出典などの追加情報は extensions にまとめます。その拡張に未対応のアプリでも本文を読み、追加情報をそのまま次の対応アプリへ渡せる設計です。重要な指示は本文だけでも読めるようにします。
各拡張は $type で識別し、アプリ開発者が自分の名前空間で定義できます。受信側は未知の型やフィールドも削除・書換えせず、配列順も保持します。全アプリの同時更新や、受信時のスキーマ取得を求めずに用途を広げられます。
この拡張は著者の署名対象です。Nostrではタグに載せ、PDSは未知の拡張も専用コードなしに元のレコードへ復元します。基本プロトコル・拡張型・メッシュ符号化は独立して版管理し、拡張の非互換変更は新しい型として区別します。
投稿者が電子署名をし、圏外でもなりすましを防ぎながら周囲の人と情報を共有できます。
誰かがオンラインになれば、集まった情報をインターネットに公開し、離れた家族も状況を検索し確認できるようにします。
これを実現するため、以下の2つのプロトコルを組み合わせます。
- nostrのイベント:本文や拡張を一つのイベントにまとめ、全体にBIP-340 Schnorr署名を付けます。オフラインの端末でもイベント単体で投稿者の署名を確認できます。どこかのサーバーにまとまるわけではないので検索はしにくいです。
- atprotoのコミット:過去の投稿からなる木構造「Markle tree (MST)」とあたらしい投稿を合わせてECDSA署名を付けます。最終的にPDSと呼ばれるサーバーに集積され、ヌケモレがないことを検証できます。検索もしやすいです。
1投稿につき、atprotoにおける投稿である「commit」、nostrにおける投稿である「イベント」を一つずつ作ります。 それぞれに署名をし、まずはnostrイベントとして2つの署名といっしょに送り出します。 経路上の中継者は、nostrイベントの署名を検証することで実際にその人が投稿したことを確認できます。 atprotoのサーバーであるPDSに届くと、サーバーはそれをcommitに変換して署名を検証します。これにより、その人が投稿したメッセージがすべて取得されてヌケモレがないことを保証でき、一箇所にまとまるので検索もできるようになります。
atprotoのコミットは普通はPDS上で署名されるのですが、今回は完全オフラインの端末から投稿するため、端末の中で署名して配送できる特殊なPDSを作りました。
flowchart TD
subgraph Device["発信端末"]
A["投稿レコードを追加"] --> B["MSTを更新"]
B --> C["新しいrootを指すcommitに署名"]
end
C --> D["nostrイベントとして運ぶ"]
D --> E["受信端末<br/>nostrイベントの署名を検証"]
D --> F["PDS<br/>atprotoコミットに変換<br/>DBに投稿を保存<br/>MSTのrootを再計算"]
F --> G{"端末が署名した<br/>rootと一致?"}
G -->|一致し、commit署名も有効| H["検証済み状態として公開"]
G -.->|抜け漏れにより署名検証に失敗| I["公開を保留"]
署名の検証だけではそれが誰であるか、正しい情報であるかはわかりません。それについてはまた別の仕組みで解決しています。
詳細:データバンドルと署名のモデル・データ表現。
常時接続を前提にせず、保存した投稿を持ち運び、接触した相手へ中継します。
配送には、通信が途切れる環境向けのBundle Protocol v7(BPv7)を採用しました。署名付きイベントをバイナリエンコードしたコンパクトなCBOR形式にし、配送用のBundleに包みます。基本の通信経路はBLE GATTやWiFiの端末間通信で、必要に応じてWifi Awareなども使います。接続時に所持するイベントIDを交換し、互いに不足する投稿だけを要求・転送します。
確立を使って送るかどうかを判断し、ネットワークの輻輳を防ぎます。
あった人全てに投稿を送信していると、送信がどんどん複製されてネットワークが埋め尽くされ、重要な情報が届かなくなってしまう可能性があります。これをフラッディングと呼び、メッシュネットワークでは情報を行き渡らせつつ輻輳を防ぐために管理された洪水「マネージド・フラッディング」が重要となります。
mosimoでは、BPv7の経由回数や経過時間の情報や投稿者が設定した優先度と地理的情報、さらに過去の履歴から相手がインターネットに繋がる可能性を推定し、送信するかどうかを判断します。 確立の推定には「PRoPHET」という仕組みの利用を想定しています。PRoPHETは、過去の接触履歴から相手が送信先に近づく可能性を推定する仕組みです。これを応用することで、重要な情報が届きやすくなります。
使える通信規格をすべて備えていなくても、Bluetoothだけでも、WiFiだけでもメッシュネットワークに参加できます。そのため、カーナビやスマートスピーカーなど、さまざまな端末が中継に参加できるようになります。
避難所にLoRaWANのゲートウェイを置くなど、超低速でも外部と通信ができる端末にmosimoを実装すれば、ここを通して完全にインターネットが不通の環境から情報を飛ばすこともできます。
詳細:メッシュ配送仕様。
サーバー障害やネットワーク障害に対しても、PDSの分散同期などにより非常に高い耐性を持ちます
インターネットにつながった端末は、持っている投稿をnostrのリレーへ送信します。Nostrリレー兼PDSに直接届けばラッキーですが、届かなくてもたくさんある他のnostrリレーを経由してなんとかして届けます。 PDSも一つでは単一障害点になるため、たくさんのPDSを用意して常に分散同期をさせます。これにより、どこかにでも投稿が届けば世界中に公開されるようになります。
PDSはmosimoからの投稿をnostrリレーから収集し、Markle treeを組み上げて署名を検証します。PDSが公開する更新を既存のatproto Relayが集約し、Jetstream経由で独自AppViewが索引化することで、Webなどから閲覧できます。
AT Protocolでは通常、複数のPDSが同じアカウントを扱うことは想定されていません。そこで、相互に同期する複数のPDSを論理PDSとしてまとめ、まるで一つのPDSかのようにrelayに見せます。これにより、mosimo形式の投稿に対応したAT Protocolのクライアントを作ればだけでも投稿を閲覧できるようになります。 もちろん論理PDSは誰でも作ることができ、ユーザーが使うPDSを自由に選べるようにします。PDSが複数の論理PDSに参加することもできます。
PDSの分散同期はだれもやっていない試みですが、論理PDSを使うというアイデアで実現しました。
flowchart TD
N["Nostrイベント<br/>本文・拡張・端末署名済みcommitの復元情報"]
subgraph Logical["論理PDS:複数の物理PDSで一つの公開窓口を提供"]
P1["物理PDS A<br/>① Nostrイベントを受信<br/>② 元のレコード・commitを復元<br/>③ MSTを再構築し、署名・rootを検証"]
P2["物理PDS B<br/>① Nostrイベントを受信<br/>② 元のレコード・commitを復元<br/>③ MSTを再構築し、署名・rootを検証"]
P1 -->|検証済みの更新| S
P2 -->|検証済みの更新| S
S["公開状態を整合<br/>head・seq・再送履歴"]
S --> E["正規公開endpoint<br/>atproto API・firehose"]
end
N --> P1
N --> P2
D["著者のDID"] -.->|正規PDSとして指定| E
E --> R["atproto Relay"]
R --> V["AppView"]
style P1 fill:#e8f0fe,stroke:#557ab5
style P2 fill:#e8f0fe,stroke:#557ab5
style S fill:#fff3d6,stroke:#b8860b
図は複数物理ノードで一つの論理PDSを提供する構成例です。現実装では共通PostgreSQLと採番の直列化で公開状態を整合させます。論理PDSは運用グループごとに存在でき、DIDごとに正規公開先を指定します。
遅れて届いても判断を誤らないように、情報の有効期限や更新情報をきちんと扱います。
効率的に配信するため、期限や影響範囲(地図上の円やブロック)を使って配送優先度を決めます。
-
いつまで有効か:配送期限と情報の有効期間を投稿時に設定できます。配送期限を過ぎた投稿はそれ以上拡散しません。有効期限が近い投稿はその種類などによっては優先的に中継します。
-
どこの情報か:投稿者の「発信地点」と、避難指示などの「影響範囲(円またはブロック)」を拡張ブロックとして表現できます。影響範囲を転送の優先度に活用し、影響のある地域へ優先的に届けます。
-
訂正・取消:元投稿を参照する新しい署名付き投稿として情報の修正などを送れます。更新を見つけたら旧版の拡散を止めるなどして、情報の混乱を防ぎフラッディングも抑えます。
CAP・EDXL-DE・気象庁XMLなどの公的情報も、拡張によって同じ通信網で扱える設計です。 人が読める本文とともに、原情報の出典・変換者・形式ごとの構造化情報を運びます。よく使うデータの種類は標準化することで、知らない拡張でもできる範囲で最大限解釈できるようになっています。
詳細:地理情報と配送優先度・公的情報との対応。
投稿への署名に加え、信頼するルート鍵からの署名チェーンで「その鍵が誰のものか」を確認できるようにします。
これにより、単に「署名が正しい」と示すだけでなく、次の違いを表示できます。
-
自治体自身の発信:自治体と投稿用の公開鍵の対応を証明し、自治体本人が署名した情報として表示します。国や自治体の協力が必要ですが、高い信頼性を示せます。
-
公的情報を転送してくれるアカウントの発信:アカウントの身元と原情報の出典を示します。自治体自身の署名ほどではないですが、信頼できると判断したアカウントにだけルート鍵で署名することで、それなりの信頼性を示せます。自治体の協力がなくても実現でき、すでにBSAF JMA Botのようなアカウントに関連して実装しています。
-
特定のアプリのユーザーによる発信:組み込み先のアプリ開発元が、そのアプリのアカウントIDと公開鍵の対応に署名します。投稿の署名と合わせて、「どのアプリの、どのユーザーが発信したか」を確認できます。 例えばLINEにこの仕組みを組み込むと、事前にLINEが公開鍵に対し署名することで、災害時の受信者は投稿をどのLINEユーザーが発信したか、もし既に友達ならどの友達かを確認できます。
信頼の起点を、一つの運営者に集中させません。 ルート鍵は自治体の確認・変換配信者の確認・アプリアカウントの確認など、目的別に用意でき、アプリ開発者が同梱したり、ユーザーが選択・設定したりできます。ルート鍵の運営者を信頼できないと思う人は、別の人が運営するルート鍵を使うこともできます。
証明は拡張ブロックとして運びます。あれば信頼性の判断に使えますし、なければ未確認の通常投稿として扱うだけです。
詳細:身元証明・アプリアカウントの証明・身元証明拡張。証明形式や失効方式は設計草案であり、証明の発行・検証は未実装です。
投稿を作る端末、中継する小型機器、公開・閲覧するサーバーを実装し、プロトコルの流れを具体化しました。
| 実装 | 担当する部分 | 実現方法・工夫 |
|---|---|---|
| Android | 投稿作成・二重署名・中継・オンライン搬出 | 端末内でレコード・MST・署名済みcommitを生成。BLEとmDNS/TCPによるLAN交換を共通の配送処理へ接続し、Keystoreを使った暗号化保存と回線復帰時の再送を実装。 |
| ESP32(M5Stack Basic) | 小型機器での検証・保存・中継 | 署名対象データを順にハッシュへ流してメモリ使用を抑え、署名検証とLittleFSへの保存後に受理応答。画面表示と音声読み上げも実装。 |
| Nostrリレー兼PDS | 収集・復元・検証・公開 | 著者の鍵を持たず、PLCの公開鍵・commit署名・再構築したMSTを照合。履歴不足は保留し、公開状態と更新配信履歴を同一トランザクションで進める。 |
| AppView・Web | 投稿の索引化・閲覧 | HappyViewとLuaクエリでフィードを提供。許可した発信元のBSAF投稿は別入力として収集し、原投稿と出典情報を保って同じタイムラインに表示。 |
BPv7ライブラリはフォークし、未知ブロックの保持・受信バイト列でのCRC検証・期限計算などを修正しました。
今回のデモで具体化した、署名付き投稿の作成・中継・オンライン公開を土台に、対応アプリ・通信手段・扱える情報を広げていきます。
-
異なるアプリ同士で使える、共通の通信基盤へ
拡張データの定義や端末間の交換仕様を整え、異なる実装同士での相互運用を検証します。各アプリが独自の機能を加えながら、同じ通信網に参加できる仕組みを確立していきます。
-
限られた接続時間を、より有効に使う
CBOR形式での交換と、受信可能な量に応じた流量制御への対応を進めます。Nearby Connectionsなどの追加経路も検討し、利用できる通信手段を広げます。
-
国内外の防災情報を、圏外にも届ける
現在のBSAF投稿の収集・表示から、CAP・EDXL-DE・気象庁XMLなどの直接取り込みとメッシュ配送へ実装を広げます。形式ごとの構造化情報や出典、更新・取消の関係を保ちながら運べるようにします。
-
情報の出どころを、通信が途絶えても確かめられるように
鍵の対応を示す宣言や、信頼する起点から発信者へつながる署名チェーンを具体化します。署名の検証に加えて、自治体などの発信元や更新・取消の権限を確認できる仕組みを目指します。

